トップページ>医療過誤・医療事件の証拠方法
医療過誤の条文
医療過誤・医療事件も,実体法的には,民法の不法行為や債務不履行の条文を根拠とします。また,手続法的には,民事訴訟法を条文根拠とします。
医療過誤事件における証拠の位置づけ
医療過誤事件は,殆どの場合訴訟になります。
訴訟は,証拠に基づいて裁判所が事実を認定し,この認定された事実に基づいて判決を下します。
そして,医療過誤事件の場合,事実としての医療機関側の「過失」「因果関係」の立証は,被害者側にあります。
しかし,この証拠は,被害者側には存在しません。
全て医療機関側が握っていると考えて下さい。
このように医療過誤事件においては,立証責任は,被害者側にあるにもかかわらず,その証拠は,医療機関側にある(証拠の偏在)という,状況の下では,証拠収集が重要な意味を有します。
医療過誤の証拠の種類
医療過誤事件の証拠としては,次のものがあります(代表的な例)。
1 診療録(入院・外来),手術録,処置録
2 問診票
3 看護記録
4 医師指示票,医師指示簿
5 診断書控え
6 処方箋
7 医師引継書
8 病院日誌,病棟日誌
9 検査記録(検査箋)
10 X線写真,CT写真,MRI画像,エコー写真などの写真
11 手術記録(手術箋),手術看護記録
12 投薬記録
13 麻酔記録
14 手術承諾書
15 集中治療室記録
16 電子記録の更新履歴
17 診療報酬請求明細書(レセプト)控え
18 その他診療に関して作成された一切の記録
19 1〜12に関する電磁的記録
以上は,代表的な例であり,病院や治療内容によって異なるものがありますので十分に注意してください。
たとえば,心臓の手術で人工心肺を使用する場合には,人工心肺記録があったりします。
どのような証拠を集めるかは,医療過誤に詳しい弁護士や協力医師の意見を十分に聞いて下さい。
ここは,医療過誤事件の実質上の入り口なので,慎重に行うことが必要です。
証拠収集の方法
1 任意で証拠の開示を求める方法
以前は,殆どの医療機関が診療記録の記録を開示することを拒んでいましたが,現在では,殆どの医療機関が少なくとも診療録の開示には,応じるようになりました。
医療過誤の証拠収集に当たっては,改ざんされることをおそれて,証拠保全手続を取らなければならないと記述されているものがあります。
確かに,我々も明らかな診療録の改ざんを目の当たりにしたことがあります。
しかし,改ざんを恐れて証拠保全手続に走らなければならないとは,大阪の弁護士は,考えていません。
医療過誤のあった診療で,医療機関が診療記録などを改ざんを行おうとする場合には,医療過誤のあった直後に既に診療記録を改ざんしています。
そのため,証拠改ざんを恐れて,必ずしも証拠保全手続を取らなければならないということはないと考えています。
とくに,大学病院や国立公立病院では,改ざんの危険は殆ど有りません。
ただし,私立病院や医院の場合には,改ざんを恐れて,証拠保全手続を取ることは正解だと思います。
証拠保全手続が本当に必要な理由は,隠匿です。
また,医療機関側に隠匿の意思がなくても,医療に関する知識のない当事者が開示を求めるものが不十分な場合に,診療録しか開示しないことが多々あるのです。
2 証拠保全手続
民事訴訟法には,次のような規定があります。これに基づいて証拠保全手続を行います。
裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、証人尋問、当事者尋問、検証、書証の取調べ等をすることができる(民事訴訟法234条)。
実際には,当該医療機関の所在地を管轄する裁判所に対して,証拠保全の申立を行います。
証拠保全手続の場合には,医療過誤事件に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。
証拠保全手続の費用は,当事務所では,20万円で請け負っております。
各事務所によって費用の額は異なりますので,相談された事務所と協議して下さい。
申立の理由の中に,申立の必要性を記載する必要があります。
この段階で,ある程度医療過誤が存在することを書く必要があります。
また,担当裁判官によっては,開示を求める必要性として,医療機関側の開示拒否したことまで書くことを求める場合もあります。
適宜・適切な対応を求められることが多いので,素人がやるのは難しいと思います。
まずは,弁護士に電話をされることをお勧めします。
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南森町佐野法律特許事務所
弁護士 佐野隆久 |